はじめに
近年健康業界で注目を集めている「フレイル」という言葉をご存知でしょうか。フレイルとは将来要介護になる可能性が高い状態を指す言葉で、高齢化が加速する現代社会においてその注目度が高まりました。生涯にわたって豊かな暮らしを送るためにも、フレイルの予防・改善方法を身に付けておきましょう。
フレイルとは
先述の通り、フレイルは将来的に要介護になる可能性が高い状態を指しています。フレイルはその症状から大きく分けて3種類に大別されます。以下、順に説明していきます。
身体的フレイル
1つ目は身体的フレイルです。加齢や病気、怪我による筋力・運動機能の低下により、身体的に虚弱となり、要介護になる可能性が高い状態を指しています。これまで身体的フレイルの大きな要因は加齢によるものだと考えられてきました。
しかし、デスクワークによる座りがちなライフスタイルや子供が外で遊ぶ機会が減っているという近年の社会環境を鑑みると、若年層でも身体的フレイルとなる人々が増えていくことが予想されます。
精神的フレイル
2つ目は精神的フレイルです。年齢を重ね、定年退職を迎えることで仕事という大きなやりがいを失ったり、大切な家族や友人との死別を経験することにより抑うつ状態や認知機能の低下といった症状が見られる状態を指します。
社会的フレイル
3つ目は社会的フレイルです。定年退職を迎えることにより社会との繋がりが希薄となり、独居や経済的困窮に陥る状態を指しています。近年では、いじめや職場環境に馴染めなかったことによる引きこもり・閉じこもり傾向なども問題視されており、このような要因でも社会との繋がりが希薄となる可能性があります。
3つのフレイルの関連性
これまで解説してきた3つのフレイルは密接に関与しており、相互に作用しています。
例えば、大切な家族を失ったことにより精神的フレイルに陥れば、行動意欲が減り、日常生活における身体活動量や他者との交流機会も減るため、身体的フレイル、社会的フレイルへと発展する恐れがあります。フレイルはどれか一つを予防すれば良いだけでなく、3つ全てのフレイルに対して予防策を講じる必要があります。
フレイルの予防・改善策
ここからはフレイルを予防・改善するために明日から実践できる方法について解説していきいます。どんな小さなことでも必ず役に立つので、できるものからコツコツと始めてみましょう!
日常生活において「動く」ことを意識する
運動習慣が身についていない人に向かって運動習慣をつけろというのは、少し強引であると思います。時間や場所を確保しなければならないため、そう簡単に始められるものではありません。
そこでおすすめなのが、日常生活での身体活動量を増やすことです。
例えば、エスカレーターの代わりに階段を使ったり、なるべく椅子に座る時間を減らすといったほんの少しの工夫で身体活動量は大幅に増やすことができます。
実際に人間の一日の総消費カロリーの内訳を見てみると、意識的な運動(ジムに行く、スポーツをする等)は約10%を占めているのに対し、日常生活における無意識的な運動(家事をする、歩く等)は約20%を占めています。したがって、日々の生活の中で「動く」ことを意識することは身体活動量の増加にとって最も手軽かつ有効な手段であるといえます。
人脈を広く持つ
フレイルの種類で解説した通り、フレイルの予防には人とのつながりが大切です。しかし、人はいつか必ず終わりが来るものでもあるため、特定の誰かに固執してしまうのはリスクが高いかもしれません。その人が居なくなった途端に喪失感・孤独感に襲われるからです。
そのため、どんな形でもいいので家族や職場、友人以外にもボランティア活動や趣味のサークルなどに積極的に参加して人とのつながりを増やしておきましょう。いざという時にきっと心の支えになるはずです。
食事を楽しむ
フレイルの予防には栄養バランスの整った食事が大切です。しかし、いきなり完璧な栄養を摂取する食事を準備するのはかなりハードルが高いでしょう。したがって、まずは純粋に食事を楽しんでください。できるだけ誰かと一緒に食べたり、地域の美味しいお店に足を運ぶのもおすすめです。
食事の楽しさを知ったあとで、少しずつ栄養を考えた食事を意識すれば生涯にわたって高い栄養状態を保つことができるでしょう。
まとめ
今回はフレイルの予防・改善方法について解説してきました。誰でも簡単に、ほんの少しの工夫でフレイルは予防することができます。是非明日から実践してみてください!
参考文献
1.東山 暦(監修), パーソナルフィットネストレーナー, NESTA JAPAN事務局, 2019年
2.東山 暦(監修).ファンクショナルアナトミー(機能解剖学)スペシャリスト. 第4版, NESTA JAPAN事務局, 2021年, p.138
3.厚生労働省HP, 健康長寿に向けて必要な取り組みとは?100歳まで元気、そのカギを握るのはフレイル予防だ. 広報誌「厚生労働」2021年11月号 特集1|厚生労働省 (mhlw.go.jp), (2021/11)
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