はじめに
皆さんは小中学生のウェイトトレーニングについてどのようなイメージをお持ちですか?
「子供の頃に筋肉をつけすぎるのは良くない」「子供の頃にウェイトトレーニングをすると背が伸びなくなる」といった話をよく耳にしませんか?
果たしてこのような情報は本当なのでしょうか。特に、現在小中学生のお子さんがいる方やご本人にとっては興味深い話題だと思います。
そこで今回は、小中学生のウェイトトレーニングの効果と行う際の注意点を解説していきます。
身長が伸びなくなるはウソ!むしろやるべき。
単刀直入に申し上げますと、身長が伸びなくなることはありません!むしろその逆で、正しく行えば成長を促してくれます。また、確かに負荷の高すぎるトレーニングは有害になりますが、適切な負荷でのトレーニングには様々なメリットがあります。
まず、骨は骨端軟骨板と呼ばれる軟骨組織が骨化することによって長くなり、骨膜(骨を覆う繊維状の膜)が骨化することによって太くなっていきます。
当然、骨の成長にはカルシウムやビタミンDといった栄養素も必要不可欠ですが、骨は与えられたストレスの量と方向に適応するように成長していくという特性を有しています。(ウォルフの法則)
つまり、骨の成長には何らかの形でストレスをかけてあげることが必要不可欠なのです。なかでも長軸方向(骨に対して縦方向)に圧縮するような力(メカニカルストレス)に対して最も強く反応し、成長が促されるため、青少年期のウェイトトレーニングは成長の妨げになるどころか成長を促してくれます。
さらに、青少年期のトレーニングには身体組成の改善(肥満の予防)やフィジカル強化、怪我の予防、関節周囲のバランス機能向上など様々な効果が期待できます。
したがって、たとえ部活動やクラブ活動に所属していなかったとしても健康的な身体づくりのためにトレーニングを行うことは有用だといえます。
※ウォルフの法則とは?
ドイツの解剖学者Julius Wolff(1836~1902年)が提唱した法則で、骨は加えられた力に抵抗するのに最も適した構造に変容していくというもの。
注意すべき点
先ほど、骨に対するストレスは成長を促すと解説していきましたが、青少年に限らずストレスの量と方向には細心の注意を払わなければなりません。
特に成長期の骨端軟骨板はデリケートで、望ましくない方向に圧力をかけたり、長軸方向の圧力だとしても過度の力が加えられると、損傷してしまう可能性があります。
したがって無理に重い物を持ち上げたり、正しいやり方がわからないままトレーニングを行うのではなく、きちんとしたフォームを身に付けつつ徐々に負荷を上げていかなければなりません。
※青少年期はトレーニングと同様にバランスの良い食事(栄養)も非常に重要です。食事は身体の土台となるもので、どんなに良いトレーニングを行っていても栄養に偏りがあると成長の妨げになりますので栄養バランスの良い食事も心がけましょう。
具体的なトレーニング方法
青少年期のトレーニングは自分自身の体重を利用したトレーニング(自重トレーニング)からスタートしましょう。これは他の年代でも同様ですが、特にこの時期は成長に伴って身体が大きく変化していくため、自分自身の身体をコントロールする力を養わなければなりません。もし、自重トレーニングに慣れており、ダンベル等のウェイトを使用したトレーニングを行う場合でもウォーミングアップとして自重トレーニングを取り入れるようにしてください。意外だと思われるかもしれませんが、自重トレーニングはマシンや器具を使ったウェイトトレーニングよりも多くの関節を使用する傾向にあるため高い運動制御能力が必要になります。これを無視して、やみくもに筋肉を大きくするためだけのトレーニングを行っていると怪我につながる可能性があるため注意してください。
また、ウェイトトレーニングを行う際もできるだけ多くの関節を使用する種目を取り入れるようにしてください。いわゆるフリーウェイトと呼ばれるものはマシンと異なり多くの関節を使用し、神経筋コントロール能力を高めることができるため、成長期におすすめのトレーニングです。
〇おすすめのフリーウェイト種目
※ダンベルやバーベルを持たずとも自重で行うことができます。
・スクワット
・デッドリフト
・ベンチプレス
・チンニング(懸垂)→自宅トレーニングの場合、懸垂バーがあると便利です。
・ディップス
まとめ
今回は小中学生のトレーニングについて解説していきました。私自身、中学生の頃は身長が低く、コンプレックスであったためウェイトトレーニングは控えていました。しかし今となっては、なぜ信憑性の無い情報に惑わされてしまったのかと後悔しています。
この記事を読んでくださった方が正しい情報を身に付け、健全な成長期を過ごされることを心よりお祈りしております!
参考文献
1.東山 暦(監修), パーソナルフィットネストレーナー, NESTA JAPAN事務局, 2019年
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