はじめに
あなたの身近な人に、”年をとっても全然太らない人”はいませんか? 誰しも2,3人は頭に浮かぶのではないでしょうか。実際に私の周りにも大人になっても体型が全く変わらない人がいます。そんな人に限って特に運動をしているわけでも食事制限をしているわけでもないというのはあるあるですよね。
実はその痩せ体質は「褐色脂肪細胞」のおかげかもしれません。
褐色脂肪細胞とは
身体には大きく分けて二つの脂肪細胞が存在します。
一つ目は「白色脂肪細胞」です。一般的にイメージされる脂肪細胞はこの白色脂肪細胞で、脂肪を蓄える働きがあります。脂肪を蓄える=太るといった悪いイメージを抱きがちですが、脂肪は内臓を保護したり体温を保ったりと人間にとって無くてはならない存在です。白色脂肪細胞は全身に広く分布していますが、特に腹部や臀部などのダイエットで落ちにくい部位に多く存在します。
二つ目は「褐色脂肪細胞」です。先述の白色脂肪細胞とは真逆で褐色脂肪細胞は脂肪をエネルギーとして使用する(燃焼する)働きがあります。褐色脂肪細胞は白色脂肪細胞のように全身に分布しているわけではなく、肩甲帯(肩甲骨、鎖骨、腋窩、胸)に多く分布しています。
また、褐色脂肪細胞は生まれながらに数が限られており、残念ながら増やすことができません。それどころか、年齢と共に減少していきます。
なぜ体型に差が出るのか
先述の通り、褐色脂肪細胞は数が限られており増やすことができませんが、年とともに減少するのを抑えたり、褐色脂肪細胞の働きを活性化することは可能です。つまり、どれだけ減少数を抑えつつ活性化を促すことができるかが年齢を重ねても太らない体質を作る上で重要だといえます。
※遺伝的要因も関与しています。
褐色脂肪細胞の数を保つ・活性化するには?
ここからは褐色脂肪細胞の数を保つ・活性化する方法を食事面・運動面の両方から解説していきたいと思います。
食事面
食事面において、褐色脂肪細胞を活性化するためには身体を温めることが重要です。加えて、良質な脂質(魚やナッツ、卵黄等)も一緒に摂取するとさらに効果的です。脂肪を抑えたいのに脂質を摂取するということに対し疑問に思う方もいるかもしれませんが、良質な脂質は脂肪燃焼に効果的であることが証明されています。
褐色脂肪細胞の活性化に効果的な食べ物 |
香辛料(ニンニク、ショウガ、コショウ、唐辛子など) |
発酵食品 |
冬が旬の野菜・根菜(玉葱、カブ、レンコン、人参等) |
魚(サバ、アジ、サンマ等) |
運動面
褐色脂肪細胞にかかわらず、運動は全身の細胞を活性化させ、体内での新陳代謝を高めます。したがって、日常的な運動習慣が最優先となりますが、特に褐色脂肪細胞にフォーカスするならば肩甲帯(肩甲骨周辺)を動かすことが大切です。
肩甲帯は図のような肩甲骨周囲の構造を指しており、上肢の(肩から下)中核となる部分です。褐色脂肪細胞はこの肩甲帯に多く存在していることから、肩甲帯の機能性を向上することは褐色脂肪細胞の活性化に密接に関与しているといえます。
エクササイズ1
まず、肩甲帯をほぐすためのストレッチをご紹介します。
上の図のように、両膝に手を置き、肩を内側に捻ります。このエクササイズは“ベースボールストレッチ”
と呼ばれ、肩を酷使する野球選手が頻繁に行うストレッチです。
実際に行ってみると肩甲骨が剥がれるような感覚があり、人によっては痛みを感じるかもしれません。痛みがある場合無理はせず、出来る範囲で行いましょう。毎日継続的に行うことで柔軟性を確保することができます。
エクササイズ2
次に肩甲帯の筋肉を動かし、機能性を高めるエクササイズをご紹介します。
用意するもの…タオル
図のようにタオルを肩幅よりも少しだけ広めに持ち、うなじに向かって下ろしていきます。下ろす際は若干下を向きながら行うと楽に行うことができます。
また、スポーツ用品店などで販売しているトレーニングチューブを使用するとゴムの抵抗が加わり、さらに効果的です。
ワンポイントアドバイス
褐色脂肪細胞は恒温動物である人間が寒さに耐えられるよう、体内で脂肪を燃やし、エネルギーを生み出すための機能として備わっています。実際に、寒冷刺激は褐色脂肪細胞を活性化することがわかっているため、先述の食事やエクササイズだけでなく寒冷刺激も利用するとさらに有効です。これは冬空の下外でランニングをしろという意味ではありません。あくまでも近場のスーパーに歩いて行ったり、暖房の効いた部屋にこもらずにアクティブに過ごすことを心がけていきましょう。
まとめ
褐色脂肪細胞を活性化することは痩せ体質を形成するうえで不可欠です。そのためには食事や運動など日頃の習慣を確立していくことが何よりも大切ですので、地道に取り組んでいきましょう!
参考文献
1.東山 暦(監修), パーソナルフィットネストレーナー, NESTA JAPAN事務局, 2019年
2.東山 暦(監修).ファンクショナルアナトミー(機能解剖学)スペシャリスト. 第4版, NESTA JAPAN事務局, 2021年, p.138
3.日向義時. “白色脂肪細胞”. ヒトの全細胞. 2021/1/2. 白色脂肪細胞 – 脂肪を蓄積する細胞 | ヒトの全細胞 (human-cell.com), (2023/11/6)
4.米代 武司,梶村 真吾. 褐色脂肪細胞およびベージュ脂肪細胞の制御機構と臨床的意義. Journal of Japanese Biochemical Society 89(6): 917-920 (2017), 褐色脂肪細胞およびベージュ脂肪細胞の制御機構と臨床的意義 (jbsoc.or.jp). (2023/11/18)
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